さらさらと心地よい伝統の麻織物を現代の日常に合わせて、優雅で繊細な麻織物を近江の地でつくり続けている企業があります。
それが、創業100年以上の歴史をもつ、麻絲商会さん。
麻を取り扱う専門商社としてスタートし原糸、生地や麻わたなどの素材づくりから、今では麻を使用した寝装、肌着、小物などを生産されている麻絲商会さんのものづくりの魅力に迫りました。
――まず、良質な麻を生み出す産地の魅力というところでお話をお伺いできますか?近江の麻、地域性についてもお聞きできますか?
私たちの仕事場がある近江は、琵琶湖に近く、湿潤な空気と鈴鹿山系からの美しい水が流れる、自然環境の豊かな場所にあります。このような環境条件は、麻の生産にも適しているため「近江の麻」と呼ばれ、古くから麻の一大産地として栄えてきました。
昔は、麻といえば皇室に献上していた歴史があるほどの貴重品でした、また正倉院には「日本最古の織物」として伝わっていることからも、織物としての希少性が見えてくるのではないでしょうか。
そんない歴史をもつ伝統の麻織物を、現代のライフスタイルに寄り添うかたちでお使いいただけるよう、寝具やパジャマ、ホームウェア、小物など、さまざまな商品をお届けしております。
――ありがとうございます。古くから麻の産地として栄えてきた近江という地域の情景が目に浮かんできます。さて、近江といえば「近江商人」が有名ですよね。たとえば地場産業として地域の皆さまと協業されることもあると思うのですが、「三方よし」の精神が感じられるような場面もあるのでしょうか。
はい、それはすごくあると思います。
近江商人の哲学に「売り手によし、買い手によし、世間によし」というものがありますが、とくに「買い手によし」は当たり前、お客様からよいと思ってもらわないといけない、お客様に喜んでいただいてこそ商売が成り立つという思いは、この地に自然と根づいていると思います。
それから「世間によし」ですが、地域全体が一丸となって産地を盛り上げていこうという気持ちがありますね。どこか一つが栄えればいい、というのではなく全体で幸せになろう、幸せは巡り巡って循環する、という考え方があるのは、この土地ならではの魅力なのかもしれません。
――そのような魅力あふれる地域、そしてあたたかい人たちに囲まれた場所で生産される麻絲商会さんの織物は寝具から小物類まで多彩な商品を展開されていますが、ふだんお客様からはどのようなお声をいただいているのでしょうか?
百貨店などで定期的に催事を行っているのですが、その時に、うちの商品(麻)の魅力を知って、「麻絲商会さんの商品を使うと、他の商品には戻れない」と言って、その度に来てくださるお客様が増えていることです。
「久しぶりやな」、「また来たよ」と言って、わざわざ会いにきてくださる。そういう瞬間は、やはり嬉しいですね。
商品を通じて麻の魅力を知っていただくことはもちろん、そこから人と人との繋がりが生まれ、あたたかな輪となり広がっていく様子をじかに感じられること。それが喜びや、やりがいにつながっています。
――使うほどに魅力が増す麻としての素材の魅力を知ると、きっと離れられなくなるのでしょうね。そういう中で、麻の魅力はどんなところにあると思われますか?
麻の魅力は一言ではとても語り尽くせませんが、まず一つ目に、一般的な綿素材と比べて吸水・速乾性に優れている、ということが大きな特徴として挙げられると思います。
とくにハンドタオルなどの小物類で試していただくと、その凄さを実感していただけるのではないでしょうか。麻のハンドタオルで手を拭いたり、水を拭き取ったりした後に風通しのよい場所で空気にさらしてあげると、あっという間に乾きます。
他にも、「接触冷感が高い」という点も麻の大きな魅力の一つだと思います。
数ある化学繊維、天然繊維の中でも、「麻は最も熱伝導に優れている」と言われているように、接触冷感――つまり触れた時にひんやりする感覚に繋がっているんですね。
――とても興味深いお話です!もう少し詳しく教えていただけますか?
たとえば、鉄をイメージしていただくと、わかりやすいと思います。
鉄って最初に触れた時、最初、ひんやりしますよね。でもそれからしばらくすると、体温が鉄に移ってどんどん熱くなる。それからまたしばらくして、違うところを触ってから鉄に戻ると、ひんやりしますよね。それとほぼ同じ原理です。
「熱伝導率が高い」といわれるように、麻には熱を通しやすい性質があるんですね。
――そうなのですね!熱伝導というと温かくなるイメージですが、逆も然りだと。麻は夏にぴったりの素材で、着るとひんやりして気持ちいい、と言われるのはそういう理由だったんですね。
はい。麻はサラサラしていて見た目にも涼しいので、「夏向き」と思われる方も多いと思いますが、冬でも着ていただけるんですよ。
たしかにそのまま着たり、温めないうちに着るとひんやりするかもしれませんが、たとえばホームウェア商品は、中に綿のあたたかいものを着てから羽織っていただくと、綿から熱が素早く伝わるので、温かさやぬくもりが感じられると思います。それと、冬は静電気が発生しやすいですが、静電気を抑えることができるのも、魅力ですね。
――麻には素材そのものの魅力が本当にたくさんあるんですね。そういう麻を生活の中で生かしてきた昔の人々の知恵も感じられます。そういえばもう一つ、気になっていたことがあります。麻に触れると、特有のパリッとした肌ざわりがあると思うのですが、ここにも何か秘密があるのでしょうか?
はい。それは「ぺクチン」といって糊(のり)のようなパリッとした感じになる成分によるものです。表面がコーティングされるようなイメージですね。そうした成分が麻に入っているので、繊維の奥に汚れが入りにくくなります。
――汚れにくくて安心して使えますね。ホームウェアも長く愛用できそうです。
はい、まさに。最初はパリッとした肌ざわりになりますが、使い込むほどに柔らかくなって、肌に馴染んでいきます。風合いや表情の経年変化を楽しめるのも、麻ならではの魅力だと思います。
――使い込むほどに、どんどん愛着が湧いてきそうです。お話を伺っていて、麻には素材そのものに本当にたくさんの魅力があることがわかりました。とはいえ、綿などに比べてやや馴染みにくく、敷居の高いイメージもあるかと思うのですが。
実は私もずっとそう思っていたので、よく分かります。麻の希少性、そして高価な織物というイメージから、麻に興味がありながらも、なかなか最初の一歩が踏み出せないという方もいらっしゃいます。でも、それはあまりにももったいない…。
ですから、そういう背景も踏まえて、今では現代の暮らしやライフスタイルに寄り添うような商品として、ハンカチやふきん、ストールなどの小物、手に取っていただきやすいアイテムを増やすよう努力しています。
――小物であれば価格帯も比較的リーズナブルなので、いいですよね。それから自分で使わなくても、大切な方への贈り物、というところで麻を選ばれる方もいらっしゃるのでしょうね。
そうですね。まずは小物から入っていただいて、そこからホームウェア、シーツやお布団というような形で、麻の魅力を少しずつ知っていただけたら嬉しいですね。
――本当にそうですね。では最後にメッセージをお願いします。
私たちは創業以来、「常に使っていただける方に安心して、満足して使っていただけるモノづくりを」ということを一番大切にして、麻織物をつくり続けてきました。創業は糸の販売からスタートしていますが、そこから麻織物になり、完成品まで一貫して生産ができているのは私たちの強みで、これは同じ産地の皆さんと支え合い協力し合っているからこそだと思っています。
そんな近江の土地に宿るあたたかさを、一つひとつの商品から感じていただけると嬉しく思います。そして生活の一部として、麻を取り入れていただけるような文化が自然と出来ていくといいですね。
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